乳糖不耐症かも?乳糖不耐症を疑ったときの検査・治療方法をまとめました
皆さんは「牛乳」を飲んでいますか?
日本人の場合、人によって牛乳を飲む習慣がある人、そうでない人がいますが、後者の場合は「牛乳を飲むと体調を崩す」という理由で飲んでいないことがあります。
この症状、もしかしたら「乳糖不耐症」かも知れません。
そこで、乳糖不耐症とはどんな病気なのかを解説し、それを踏まえたうえで検査方法や治療方法について解説していきたいと思います。
乳糖不耐症とは?どんな症状?
乳糖不耐症とは、簡単に言えば「乳糖を分解できない病気」です。
乳糖とは、ミルクや乳製品に含まれている二糖類であり、本来は小腸の中に存在する分解酵素である「ラクターゼ」によってグルコースとガラクトースに分解されます。
しかし、人によってはこの分解酵素が十分な量だけ存在していないことで、乳糖の分解が十分に行われず、吸収できないことで乳糖がそのまま腸内を進んでしまいます。
乳糖は小腸で吸収されることなく、大腸まで進みます。
そのまま便と一緒に排出されてくれれば良かったのですが、実は大腸内には分解されなかった乳糖を利用することが出来る腸内細菌が存在します。
腸内細菌は分解されずに大腸までやってきた乳糖を発酵させ、酸やガスを発生させます。
これに加えて、乳糖によって大腸内の浸透圧が上昇し、濃度の低い腸管の粘膜から腸管内に水分が移動します。
大腸内まで進んだ乳糖を原因として、「細菌が乳糖をガスなどにして腸壁を刺激」および「浸透圧で便の水分が増加する」ことにより、下痢の症状を引き起こすことが多いです。
乳糖不耐症の原因はミルク?
確かに、ミルクを飲むことで乳糖を摂取することになるので、乳糖不耐症の原因はミルクであると言えるかもしれません。
しかし、「ミルクを飲むことで乳糖不耐症を発症する」ということは、厳密には正しいとはいえません。
乳糖不耐症の原因は、乳糖を分解する酵素が少ないことで、分解されなかった乳糖が大腸内まで移動して下痢などの症状を引き起こすことです。
つまり、根本的な原因は何かといえば、「乳糖の分解酵素であるラクターゼが少ないこと」と言うのが正しい認識です。
そして、ミルクを飲むことではなく、ミルクや乳製品であるヨーグルトなどに含まれている乳糖を摂取することが問題となります。
言い換えれば、乳糖さえ含まれていなければ、ミルクやヨーグルトを食生活に取り入れたとしても、乳糖不耐症の症状に苦しめられることはないのです。
わかりやすい根拠としては、「牛乳はNGだけどヨーグルトならOK」という人が理解しやすいかと思います。
人によっては、牛乳を飲むと下痢を引き起こしてしまうことがあっても、ヨーグルトなら下痢をすることなく摂取できるという人もいます。
その人が本当に乳糖不耐症であるとしたら、その差の原因はヨーグルトに含まれる乳糖の分量の違いです。
実は、ヨーグルトはその加工の過程で一部の乳糖が乳酸に変わるのです。
乳酸は乳糖不耐症とは無関係なので、乳糖が減った分だけ症状が現れなくなる可能性があるのです。
前述のとおり、乳糖不耐症はラクターゼが少ないことなのですが、この規模、つまり「ラクターゼが全く無いのか、それとも少ないだけなのか」という部分が重要なのです。
ラクターゼが少ないという人も一応はラクターゼが存在していることになるので、ミルクほどの乳糖含有量だと分解しきれなくなっても、ヨーグルトであれば十分に乳糖を分解しきれる事になります。
ミルクを原因だと決めつけていたのは、かつて乳糖不耐症の研究がなされていなかった、今から50年以上前(当時は牛乳不耐症と呼ばれていた)の話になります。
乳糖不耐症の検査方法と治療方法
乳糖不耐症の検査方法はいくつか存在しています。
最も簡単な方法としては、乳糖不耐症の疑いがある人に「ラクターゼ製剤」を服用してもらい、症状が改善されれば乳糖不耐症であると診断することができます。
しっかりとした検査方法としては、乳糖を摂取してもらい、それが分解されずに便として排出された場合は乳糖不耐症である、もしくは腸粘膜を採取して検査を行うといった方法もあります。
その治療方法についてですが、乳糖不耐症の種類によって必要性および必要な治療法が異なります。
乳糖不耐症には「先天性」「後天性」「遅発性」の3種類があり、先天性の場合については後述します。
後天性の乳糖不耐症は、何らかの基礎疾患が存在している、もしくは服用している薬の副作用によるものなので、その治療及び対処を行う必要があります。
遅発性については、特に治療する必要はありません。
乳糖不耐症は大人でもなるの?
なぜ、遅発性の乳糖不耐性は治療の必要が無いのか、その理由はそもそもの問題として乳糖不耐性が「人間にとって自然なこと」だからです。
もう少し大雑把に言うと、哺乳類であるかぎりは乳糖不耐症は自然なことなのです。
これをもう少し厳密に言えば、哺乳類は大人になるにつれてラクターゼの活性が低下するので、乳糖不耐症になるということは哺乳類の存在の観点から見ると自然なことなのです。
哺「乳」類と言いながら、乳糖不耐症が自然なことである理由は、哺乳類が乳を摂取する期間にあります。
通常、哺乳類は生まれてから暫くの間は、母親の母乳で育ちます。
しかし、ある程度の成長を果たすと、その後はその生き物に固有の食事を行うようになります。
私達、人間の場合は母乳もしくは人工のミルクを飲んで育ち、ある程度の成長を遂げたら離乳食、そして最終的には野菜に肉、穀類に魚と、さまざまなものを食べて生きていきます。
犬や猫について想像するとわかりやすいのですが、授乳期を過ぎた個体はそれ以降に乳を摂取しなくても生きていけますし、人間がミルクを与えないかぎりは乳糖を摂取することはありません。
つまり哺乳類の一生において、授乳期を過ぎたら乳糖を摂取する機会がないので、その分解酵素であるラクターゼの活性が低下し、乳糖不耐症となるのです。
人間だけは特別で、大人になっても乳製品を摂取する習慣があることで、本来は哺乳類の宿命として乳糖不耐症になるはずが、耐性を獲得しているのです。
赤ちゃんが乳糖不耐症になったら母乳はあげていいの?
しかし授乳期であっても先天的にラクターゼが欠損している場合もあり、これは先天性の乳糖不耐であり母乳を飲めなくなるので、遅発性とは違って危険なことです。
大人になれば乳製品を摂取しなくても生きていけますが、母乳を飲んで成長する赤ちゃんの場合は死活問題となり、治療の対象となります。
しかし治療方法は単純な話で、「乳糖分解酵素(の製剤)を経口摂取」もしくは「乳糖を抜いた専用のミルクを与える」といったものが挙げられます。
これらの治療法は一生涯にわたって行われるようなものではなく、授乳期が過ぎて離乳食を食べるようになれば治療を終えることができますが、ラクターゼが欠損しているので、その後の食事において乳糖を含んだものは避ける必要があります
母乳を与えても良いかどうかは、先天性の乳糖不耐をどのように治療するかで分かれ、分解酵素を経口摂取する場合は問題ありませんが、そうでない場合は乳糖抜きの専用のミルクを与える必要があります。
まとめ
乳糖不耐症は哺乳類である人間にとって本来は自然なことであり、牛乳を飲めないことはおかしなことではないのです。
しかし、赤ちゃんにとっては死活問題であり、大人の場合でもアレルギーなどの危険な病気との鑑別は重要です。
もし、思い当たる症状がある場合は、一度病院などを受診することをおすすめします。
また、乳糖不耐症になってしまうとどうしてもカルシウムが不足しがちになりますので、
食事や場合によってはサプリメントで上手に補完することをおすすめします。